社会の参考書紹介ブログ  解き方×周辺視

高校入試社会を中心に、参考書の中身の解説をします。

社会の参考書 入試問題 解説 歴史 だまされないこと

(構成)

1 問題文紹介とシンキングタイム

2 知識以外を問う=難問  ではない

3 私の解き方

4 まとめ

 

1(問題)洛南高校改 

次の戸籍について述べた後の文a.bの正誤の組み合わせとして正しいものを、あとのア~エのうちから1つ選んで、記号で答えなさい。

 

(戸籍)

A 年27歳  B 年67歳

C 年5歳   D 年39歳

E 年23歳  F 年1歳

G 年1歳

※ AとFは男性で、それ以外は女性である。

a:この戸籍の中で口分田を支給されるのは5人である

b:AとBの2人は調・庸を負担した。

 

ア a:正 b:正   イ a:正 b:誤

ウ a:誤 b:正   エ a:誤 b:誤

 

 

 

 

 

 

thinking…

 

 

 

 

 

 

2 知識以外を問う=難問  ではない

 

前の記事でも一度ご紹介差し上げたことがあり、

 

その内容とは反対のことを申し上げることになると思います笑

 

思考力を試すこと=知識(暗記)はいらないということ

 

という誤解がはびこっています。

 

そのことについては前に書かせていただきました。

 

 

syakaimanabu.hatenablog.jp

 

 

 

 

 

 

今回はある意味真反対の内容で、

 

ものすごくたくさんの知識を総動員しないと解けない気がする

 

という思い込みをさせつつ、

 

実は全然そんなことはない

 

というパターンです。

 

名門校であれ何であれ(というか多分名門校ゆえになんですが)、

 

簡単な知識を難しく見せ、失敗を誘発することはよくあります。

 

 

今回の題材は奈良時代の班田収授を含めた税制について

 

です。

 

 

 

正確に、様々なことを勉強しているからこそ、

 

必要な知識を抜き出せるようにしなければいけません。

 

 

 

 

3 私の解き方

 

解き方というか、まずはこの範囲の簡単な知識チェックをしましょう。

 

周辺視 班田収授と税制

 

班田収授の根本として、

 

公地公民

 

という制度があります。

 

「公」=朝廷、政府、国家など、まぁ政治の中心ぐらいのイメージでいいでしょう。

 

つまり、土地と人民は「公」=天皇のもの

 

ということですね。

 

 

そうすると、

 

6歳以上の男女に口分田を与え、死ねば返させる

 

という、班田収授のルールもよくわかる。

 

「田を」「授ける」

 

誰が?誰に?

 

ということですね。

 

そこに、租庸調のルールが入ってくる。

 

あえてそこを後で触れることにして、

 

この問題と向き合います。

 

 

 

 

 

 

 

a:この戸籍の中で口分田を支給されるのは5人である

 

ぜっっっっっったい違いますね。

 

どうみても6歳以上は4人です。

 

さすがにこれは引っかかっちゃダメ。

 

 

というより、天下の名門校ですから、

 

これが選択肢にあるのは正直いただけないです。

 

せめて7歳以上の女性を1人入れたり男性の数を増やして、

 

え?女性の6歳以上は負担しないんだったっけかな?

 

ぐらいに揺さぶるかなんとかして

(さすがに洛南受験生は揺さぶられないと思いますが…)

 

 

もう少し複雑にして!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

b AとBの2人は調・庸を負担した。

 

これが今日のミソです。

 

勉強が中途半端であればあるほど、

 

女性って庸調を負担するのか?

 

という疑問が浮かぶわけです。

 

そこからは、見方が2つあります。

 

 

 

 

 

まずは、知識として女性が租庸調をすべて負担するのか知っているかどうかという話。

 

正確に言えば、

 

庸…21歳以上の男性

 

調…17歳以上の男性

 

に負担されます。(もっというと正丁とか次丁とか中男とかあるけど)

 

おそらく、どの塾でも

 

庸調は男性負担

 

とか、

 

もっと正確なことを

 

教えているとは思いますが、

 

 

多くの名門校狙いの受験生ほど、

 

 

先々を考えてプラスアルファのことを学習していますから、

 

 

余計に混乱するように出題されているとは思います。

 

 

ただ、それにしてもそんなに複雑じゃない。

 

 

厳しい言い方になってしまいますが、

 

 

そういう揺さぶられ方に引っかかっているようではいけません。

(出題者側は選りわけができるので意図通りですが)

 

 

 

 

 

もう一つの見方として、

 

Bが負担される可能性があるなら、DやEはどうなの?

 

という、まぁある意味文系的な発想で攻めることです。

 

なんで女性の最年長の人だけが負担するの?

 

現在の税制から考えてもおかしいしなー

 

ぐらいの感じで。笑

 

D、Eが負担しないのは。女性が負担するかどうかという点でも怪しいな。

 

と、思ってほしいところ。

 

 

 

 

 

 

というわけで、おそらくですが、

 

中途半端に勉強してきた人を振り分ける選択肢

 

と考えて差し支えないと思います。

 

 

まぁそう考えるなら、

 

aの選択肢なんかなんでもいいのかもしれませんね、

 

それにしても、

 

気づいていただけましたか?

 

 

 

 

中途半端に勉強した人をふるいにかける

 

 

という意図でいうなら、

 

これぐらいの、なんとなく思考力を使わせそうな感じの問題で、

 

受験生の心をざわつかせさえすれば、

 

ミスを誘発させることができるんです。

 

 

 

そういうふうに、出題者側は考えている可能性があります。

 

もしかしたら統計上、そうなっているという実績があるのかもしれない。

 

 

受験当日の受験生は緊張しています。

 

意外とこれぐらいで、

 

名門校の生徒といえどひっかかるのかもしれないし、

 

その程度ではひっかからない生徒が欲しいのかもしれないですね。

 

正解 エ

 

 

 

4 まとめ

 

思考力を使わせそうな問題を、

 

あえてミスの誘発に使う

 

あたりは、なんというか名門校らしい贅沢な問題の使い方です。

 

 

 

受ける側としては、

 

どんな問題であれ、今の現状(知識)

 

で、できる問題を冷静に解くしかできないんですね。(それが難しい…)

 

だからこそ、

 

最初に申し上げた

 

思考力を問う = 知識はいらない

 

は、おかしいんです。

 

 

思考力を問う時こそ、知識が自分の中に間違いなく入っているかどうかが、

 

その思考を信用できる指針になるんです。

 

暗記がいらない

 

というのは、部分的に支持できますが、

 

知識はいらない

 

ということは絶対にありえません。

 

 

「ひっかからない力」

 

の源泉は、

 

おそらく思考力ではなく知識「力」です。

 

それも立派な実力です。

 

 

 

今回は以上です。

 

ありがとうございました。