社会の参考書紹介ブログ  解き方×周辺視

高校入試社会を中心に、参考書の中身の解説をします。

歴史の並びかえ

(構成)

1 問題文紹介とシンキングタイム

2 並び替え問題の複雑さ

3 私の解き方

4 まとめ

 

1(問題)

大教大天王寺(略)(線部筆者)

次のA~Dは幕末から明治時代初めの出来事について述べたものです。

年代の古いものから順に記号を並び替えなさい。

A:徳川慶喜は政権を朝廷に返還することを申し出た

B:満20歳に達した男子は、士族・平民に関わらず兵役の義務を負うことになった。

C:土地と人民を政府に返させた。

D:藩を排して府・県を置き、中央から府知事・県令を派遣して治めさせた。

 

 

 

 

 

 

thinking…

 

 

 

 

 

 

2 並び替え問題の複雑さ

 

歴史の並びかえを苦手とする方が多いという話はよく聞きます。

 

よくあるアドバイスとしては「キーワードに線を引いて、時代判別をして…」

ってやつなのかなと。

 

大学生の時に塾講師のアルバイトをしていたとき

「苦手」という声に関しては正直

 

「うーん…?なんでぇ…?」

 

とか思っていたんです。

 

 

けど

色々問題を見ていると、

やっぱり並び替え問題って結構奥深いものが多い。

 

というより、

 

歴史って、やっぱり「いつ」にフォーカスした問題はどうしても多様で奥深くなるんじゃないかな。

 

なんて仮説を立て始めています。

 

 

「因果関係がわかっていたら解ける!」

とか

「年号は暗記しなくていい!」

 

なんて、解く側のモチベーションアップを喚起する口ぶりは参考書でもよく見ますけれど、

 

結局のところ、結構総合力を問われている感じがしなくもないですね。

 

これさえできりゃ、並びかえは大丈夫だよ

 

って、なかなか言えない。

 

記述の方がテクニックの汎用性が高い気がしています。

 

 

3 私の解き方

 

まず、問題文をヒントに、時代を分けちゃいましょう。

それから、選択肢が何を言っているのかもできれば明らかにしたい。

 

A:徳川慶喜は政権を朝廷に返還することを申し出た

→これはもちろん1867年の大政奉還で、これが江戸と明治時代のほぼ境目の単語であることを知らないと、受験生ならちょっとヤバい。

 

ということは、問題文にある「幕末~明治初め」

に沿っていくと、幕末ならAより前、明治ならAより後になりますね。

 

 

☆周辺知識

高校受験レベルにおいて、

江戸と明治の時代またぎで前提でありながら重要な視点は

「支配者の交代」

がその一つといえます。

武士の政権 → 朝廷の政権(中央集権)

ですね。

 

そもそも「大政奉還」の「奉還」だって

「還し奉ります」

なんてうやうやしく言ってるんだから、誰に返したか割とはっきりしますよね。

 

ということは、残りの選択で、

「誰が支配者なのか」

という匂いをかぎ取ることも、重要なセンスにつながると考えられます。

 

 

 

B:満20歳に達した男子は、士族・平民に関わらず兵役の義務を負うことになった。

 

これは「徴兵令」ですね。1873年というのは知っておいた方がいい年号ですが、テスト当日ならピンと来ない人もいるかもしれません。

 

 

そこで、問題文のヒントがいい働きをします。

「士族・平民に関わらず」

という文章で、「江戸ですか?明治ですか?」

と問われたら、「江戸」は薄いと思いませんか?

武士の時代に、20歳以上が全員兵士になるなんて、やっぱり不自然ですよね。

 

ですので、少なくとも明治、つまり、少なくともAより後

だといえますよね。

 

 

C:土地と人民を政府に返させた。

これは「版籍奉還」です。

版図…土地

戸籍…人民

を、「還し奉る」

 

誰に?

天皇にですね。

 

大政奉還よりも前にこれをするのはかなりアクロバティックですね。

(昔は守護・地頭を置いたりしてたけど)

 

てわけでこれも明治です。1869年。

 

 

D:藩を排して府・県を置き、中央から府知事・県令を派遣して治めさせた。

 

これは「廃藩置県」です。おそらく名前は知っている人が多い。1871年も知っている人が多いハズ。

 

ですが、これも「江戸か明治か?」っていう限られた条件なら難しくないんです。

まだ大政奉還もしてないのに、出し抜けに「藩は廃止だ!」なんて言うのもかなり無茶してますよね。

 

よってこれも明治と予想してもいい。

 

さぁ、割とひらめきどころなんですが、

 

「こんなことをやるんなら、Cを先にやってしまう方がいいんでない?」

 

ということをパッと思いつける人はやっぱりセンスがありますよね。

当たり前のことではあるんですが、そこに思考が届くことも大切です。

 

なので、C→Dの順なんじゃないでしょうか?

 

 

 

☆条件をまとめると…

 

① Aが江戸、他が明治だからAが一番前

 

② C→Dの順

 

というポイントに行き着けたらかなり予想がうまくいってます。

知識が不足していたとしても、24通りの組み合わせの中で、

以下の3つまで絞れました。

 

Ⅰ A → B → C → D

 

Ⅱ A → C → B → D

 

Ⅲ A → C → D → B

 

言い方を変えれば、正答率が8倍にアップ!笑

24分の1が3分の1に!笑

 

あてもんちゃうねん

 

という声も上がりそうですが、

 

選択肢を削る

 

という作業も立派なテクニックだと思います。

 

ここまで絞ったんだというなら、その子をほめてあげてほしいぐらいです。

 

最後に元も子もないことを言いますが、

 

大教大天王寺(府天)

 

と受験するなら、4つとも年号を知ってないといけないレベルの問題ではあります。

A 1867  B 1873  C 1869  D 1871

 

けど、優秀な生徒さんでも社会は苦手って人は多いですからね。

 

こうやって少しでも、鉛筆ころがしの精度をあげることも立派なチカラなんだよと、言ってあげたいような気がします。

 

 

答  A → C → D → B

 

 

4 まとめ

 

くりかえしになりますが、

 

並び替え問題は暗記の側面も因果関係の側面も両方必要です。

 

しかも、見ていただいてわかるように、

 

因果関係の側面はものすごく根拠があいまいです。

 

急に

版籍奉還廃藩置県の後だよ。それが事実だから。」

 

なんて言われようもんならその時点でもうおしまいなんです。(勿論ちがいますよ)

 

そこが社会のあいまいさで、苦手な人を増やす要因のような気がします。

 

暗記科目だって言ってる人の気持ちもよくわかるというか、部分的にはそのとおりですからね。

 

 

ただ、こういう感覚を身に着ければ、正答率が上がっていくという傾向というか統計があるということも

過去の受験生がそれこそ歴史的事実を作っていますから笑

 

 

あいまいだけど、どこかにコツはある

 

ぐらいの付き合い方をしていくぐらいがちょうどいいんではないでしょうか。

 

一応ですが、全国レベルの並び替え問題のメッカといえばやっぱりラ・サールじゃないかと思います。受験生の皆さんは、一度力試しに問題を探してみるのもいいかもしれませんね。

 

今回は以上です。

 

ありがとうございました。